母はわたしにスカートを作ってくれた。世界にひとつだけのスカートは、とても嬉しく、幸せで、でも誰とも同じものではないという満足感と違和感が共存するものであった。わたしの問題なのだろうが、流行を全く無視したスカートだったため、この貧困なオシャレスキルでどうこうするには割と難しい存在だった、と思う。



母と言い争いをする度に、母は「もうスカート作らないよ」と言った。わたしも事あるごとに母と弟に対して脅しのようなことを告げていたので、恐らくそれがうつったんだろう、と思う。

当時はそれがどうしようもなく怖いことで、見捨てられることを意味していて、「母のスカートを作ってもらわなくなったら、わたしはもう愛してもらえない」ぐらいに思っていた。これは拡大解釈、若干誇張した表現かもしれないが、あの頃のわたしは「母に関心を示されない」=死、ぐらいに思っていたので、強ち間違いではないだろう。



でも今、母親から物理的にも精神的にも距離を取ろうとぼんやり思っていたが、いよいよ本格的にやろうと決意に変わってきたので、とりあえずもし今後「もう作らないよ」と言われても、「いいよ」と答えたい。

あと、いつまでも母がスカートを作ってくれるから、そのへんで売っているすぐに作れそうなスカートを買って「またそんなの買ったの?」と言われることを恐れずに、自分のお金で服を買いたい。